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都江堰水利系統

都江堰水利系統_b0102720_16431285.jpg場所:四川省都江堰市
時代:BC3世紀頃
種別:水利施設

都江堰水利事業は、四川省岷江の中流に位置する。

古代の都安県にあったため、古くは「都安堰」と呼ばれた。
宋・元の時代以降、「都江堰」と改められ、「千古の稀少」、「治水の宝」とたたえられた。
2000年には、世界文化遺産に登録されている。

「都江堰」は、戦国時代に秦の昭王が在位の時(紀元前276年~256年)、蜀の郡守であった李氷とその子李二郎が工事を行った。
紀元前316年、秦は蜀を攻め、その領土とした。
中国で最古の水利工事である。

その最も重要な部分は水路の入口部分で、「都江堰」の灌漑システムの要となっている。
「宝瓶口」は水の流量を調節し舟運と灌漑に役立つ。
「魚嘴」は岷江を二つに分け、「飛沙堰」は放水路である。
これらの3つが水利事業を形成している。

魚嘴が岷江の内江と外江の分水を行う。
増水期は上流から流れてきた岷江総水量の60%が外江に入り、40%が内江に流れる、渇水期が逆になり、60%の水量が内江に入り、40%の水量が外江に入る。
このように内江に入る水量をコントロールすることで、増水期は洪水にはならないし、渇水期は農業灌漑用水を保証できる。

都江堰第二の主要部分・宝瓶口は成都へ水を導入する主要な役割のほかに2回目分水の役割も果たす。宝瓶口は幅が一定なので、その中に入る水が自然に制限されている。
余った水が飛沙堰を通って、外江に流れ、うまく2回目の分水を行う。

「飛沙堰」は長さ200mで、内江の過剰な水と土砂を外江に放流する役割がある。
すなわち洪水期の分洪と沙を排出する役割を果たしている。

古代において、「都江堰」の灌漑最大面積は300万ムー(1ムー=6.667アール)で、現在は40余県が恩恵を受け、灌漑面積は1千万ムーを越えている。
これが「天府の国」と言われる四川省の豊かな資源・物産の源泉の一つとなっている。
2200年余りの時を経ても、治水、灌漑、舟運の機能を兼ね備える、世界で唯一のダムの無い引水型の水利施設であり、自然を破壊することなく自然を利用した例と言える。

古代の都江堰は、洪水防止、農業灌漑用水提供などが目的だけではなく、軍事用の重要な役割も果たしたらしい。
紀元前376年、中国統一する第一歩として、秦軍が四川省を攻め、当時四川省を支配している蜀国を滅ぼしした。
その後、紀元前 280 年、秦は楚国を攻めたが、軍事用物資の配達と輸送問題を解決するには岷江の流れを成都へ流すことにしたらしい。
「都江堰」完成後の紀元前223年、秦国100万の軍隊が成都から出発し、楚国を滅ぼして、2年後中国を統一した。

「都江堰」のそばの山上には、李氷父子の治水の功績をたたえ記念廟が立っている。
廟から山を背景に見る景色は、雄大壮麗である。
by chinafish | 2005-06-03 16:41 | 中国建築
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