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中国を読む/中国語五十年


中国語五十年/倉石武四郎/岩波新書

元東京大学教授の著者が、中国語を学んだ50年間を振り返って書いた本です。
もう30年以上前の本ですが、とても面白く一気に読みました。

倉石さんは、1897年(明治30年)生まれ、高校生のとき初めて中国語を始めたが、当時は日中辞典もまともな教科書も無かった時代。
「官話 急就篇」という文法説明もない漢字だけの100ページほどの入門書を2週間かけてひたすら「丸暗記」したそうです。
発音はどうしたかと言うと、イギリス人がローマ字で書いた発音字典を引いて覚える。
この「官話 急就篇」というテキスト、インターネットでその一部が読めます。

中国を読む/中国語五十年_b0102720_7482526.jpg

問答之上
(一)來了麼 來了
(二)走了麼 走了
(三)行不行 行
(四)好不好 好
(五)對不對 對
(六)買不買 不買
・・・
問答之中
(1) 儞數了沒有----數了 / 有多少----有五十
(2) 他中了沒有----中了 / 中在第幾名----第一名
(3) 天晴了麼----晴了 / 有風沒有----沒風
(4) 是順風麼----是頂風 / 浪大不大----浪倒不大
(5) 您帶着表哪麼----帶着哪 / 現在幾點鐘了----九點半鐘


実用一点張りの一言会話集みたいで、今でも使えそうです。

口袋型「官話急就篇」という本も戦前作られています。
これは中国に侵攻する軍隊や満州に移民した日本人向けに急遽作られたらしい。
当時中国語を学ぶと言うことは、日本の植民地拡大と深く結びついていた「戦争語学」だったのかもしれません。

倉石さんはその後東京大学支那文学科に入学します。
そこで師事した先生が、「張廷彦」と言う人。
(本の中の写真がとても味があって必見です)
教材は自分で選び、マンツーマンで勉強したとか。
おおらかな一面もあった時代だったんですね。

その後倉石先生は、留学したり、教科書を書いたりと中国語学習の第一線で活躍されますが、その歩みが、日本の中国語学習の歩み、さらには現代中国語の成立過程と重なっていて、非常に興味深く読めます。
色々な方言を聞き分けようとする留学時代や、オシロスコープで沢山の中国人の発音を分析して声調を研究したり、いろいろと学習方法を思考錯誤するくだりも面白い。ただ後半は、東大の先生らしく難しい話もあってやや難儀しますが・・

いずれにせよ、中国語を勉強する人には、いろいろ示唆されることの多い本です。

この本を読んで初めて知ったのですが、ピンインが使われだしたのは1958年頃、今勉強している中国語が確立されたのは、比較的最近なんですね。

倉石さんは、「紅楼夢」を中国語のテキストとして2回勉強したそうです。

私もいつか中国語で「紅楼夢」を読めるようになりたいと思いましたが、今生のことになるのやら・・・


by chinafish | 2006-11-27 07:48 | 中国を読む
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